フォトニクス最新ニュース

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フォトニクス最新ニュース

世界の光技術に関する最新動向を、信頼できる情報源から厳選してお届けします。レーザー顕微鏡、レーザー分光、量子光学をはじめ、幅広いフォトニクス領域の研究開発・産業動向をわかりやすく解説します。

最終更新:2026年7月29日

量子光学2026年7月NEW

ポラリトン・レーザーの「強結合⇄弱結合」を1枚の共振器で連続観測——室温コヒーレント光源へ(露スコルテック)

スコルコボ科学技術大学(Skoltech)らが、光と物質が融合した準粒子「ポラリトン」を用いるレーザーで、共振器の厚みを少しずつ変えることにより「強結合」から「弱結合」への切り替わりを1つの素子の中で連続的に観測したと報告しました。ポラリトンは光子と半導体構造の相互作用で生じ、密度が高まると励起子の波動関数がそろって「ポラリトン凝縮」と呼ばれるコヒーレントな状態を作り、反転分布を必要としない低しきい値のナノレーザーになり得ます。研究チームは有機ポリマーMeLPPPの厚さ180nmの薄膜をブラッグ鏡に載せ、空気層を挟んだ非対称の開放型共振器を作製。局所的な圧縮で厚みを精密に調整し、フェムト秒レーザーで動作を実時間観測したところ、発振しきい値が動作領域によって1桁以上変化することや、ポラリトンのエネルギーがポリマー分子の振動共鳴と一致するとしきい値が下がることを捉えました。低温冷却の要らない超高速の光スイッチや光論理素子、通信回路・高感度バイオセンサーへの集積が期待されます(Nanophotonics 掲載、2026年7月28日)。

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出典:phys.org(Skoltech/Nanophotonics)
レーザー分光2026年7月NEW

光で現れる「隠れた状態」を30フェムト秒で追う——超高速分光が金属有機構造体の中間状態を捉える(東京科学大ほか)

東京科学大学(Science Tokyo)・東北大学・名古屋工業大学の研究チームが、時間分解分光(ポンプ・プローブ分光)を用いて、金属イオンと有機分子をつないだ金属有機構造体(MOF)が光を吸収してから「隠れた状態(hidden state)」を作るまでの過程を、わずか30フェムト秒の時間スケールで観測したと報告しました。材料は光を当てると通常とは異なる性質を示す状態に移ることがあり、加熱・冷却では届かない制御の手がかりになりますが、その最初期の変化は極めて短時間で起こるため観測が困難でした。研究では6フェムト秒の超短パルスを使う時間分解反射分光により、光吸収の直後に隣り合うサイト間の結合が強弱を繰り返す「ボンドオーダー波」と呼ばれる中間電子状態を経て、30フェムト秒以内に新たな光吸収帯(=隠れた状態)が生じることを突き止めました。この隠れた状態は正負の電荷が偏った「極性」を持ちうるとされ、光による材料物性の高速制御や光電子デバイスへの応用が期待されます(Physical Review Letters 掲載、2026年7月22日)。

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出典:phys.org(東京科学大学ほか/Physical Review Letters)
その他2026年7月NEW

光を当てるだけで半導体を「トポロジカル」に——フロケ状態の直接観測に世界初成功(スイス・フリブール大)

スイス・フリブール大学のClaude Monney教授らが、強い光で物質の電子状態を一時的に作り替える「フロケ工学」を用い、光を当てている間だけ半導体をトポロジカル絶縁体のように振る舞わせる「フロケ・トポロジカル状態」を実験で直接捉えることに世界で初めて成功したと報告しました。2011年に理論提案されて以来、この状態は極めて短寿命で他の光‑物質効果と区別しにくく、実証は困難とされてきました。研究チームはトポロジカル相転移に近い半導体スズテルル(SnTe)を30Kに冷やし、バンドギャップ付近に調整したフェムト秒のポンプ光を照射。時間分解ARPES(角度分解光電子分光)で電子構造の時間変化を追ったところ、ポンプ光が当たった瞬間だけトポロジカル表面状態の目印である「ディラックコーン」が現れ、約100フェムト秒後に消えることを観測しました。原子の位置は動いておらず、光による電子構造の反転(バンド反転)が原因と結論づけています(Nature Physics 掲載、2026年7月27日)。

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出典:phys.org(フリブール大学/Nature Physics)
その他2026年7月

レーザーが材料を蒸発させる「反跳力」で切断の深さを測る——半導体ウェハのダイシングを実時間監視(千葉大)

千葉大学大学院工学研究院の比田井洋史教授らが、レーザーダイシングの加工深さを、加工中に生じる「反跳力」から実時間で読み取る手法を報告しました。レーザーダイシングは半導体ウェハからチップを切り出す工程で、機械的な刃に比べて壊れやすい材料に応力をかけずに加工できる利点があります。一方でパルスが足りなければ切り残し、多すぎれば材料や固定テープを傷めるため、深さの管理が歩留まりを左右します。研究チームは、パルスが材料を急速に加熱・蒸発させたときに表面へ生じるごく小さな反力に着目し、ロードセルで測定しました。パルスエネルギーを上げると反跳力は増え、焦点を外すと減るという関係が得られ、25ナノ秒パルスによるシリコンの穴あけでは、深さが増すにつれて反跳力が規則的に低下し、貫通した瞬間に明確な変化が現れました。装置を止めずに測れるため、製造ラインでの工程監視への適用が見込まれます(Optics and Laser Technology 掲載、2026年7月27日)。

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出典:phys.org(千葉大学/Optics and Laser Technology)
光学素子2026年7月

表から見るか裏から見るかで応答が変わる薄膜——磁場もメタマテリアルも使わずに光の相反性を破る(米コーネル大)

米コーネル大の研究チームが、溶液プロセスで作れる半導体ナノクラスタの薄膜において、直線偏光の吸収と発光が表側と裏側で異なる「非相反」な振る舞いを示すことを実証しました。通常の光学素子はどちら側から光が入っても同じように応答します(光学的相反性)。これを破るには複雑なメタマテリアルや外部磁場が必要とされてきました。研究チームが用いたのは「マジックサイズクラスタ」と呼ばれる、らせん状に自己組織化するナノ材料です。薄膜に加工すると直線偏光にも円偏光にも強く相互作用し、線二色性とキラル二色性が同時に現れます。この組み合わせによって、同じ膜が向きによって別の偏光板のように振る舞います。一方向性の光学素子や、量子情報処理に向けた偏光制御への応用が期待されます(Nature Materials 掲載、2026年7月27日)。

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出典:phys.org(Cornell University/Nature Materials)
光学素子2026年7月

磁石を使わずチップ上で光を一方通行に——電気で広帯域に調整できる光アイソレータ(米イリノイ大アーバナ・シャンペーン校)

米イリノイ大アーバナ・シャンペーン校の研究チームが、薄膜ニオブ酸リチウム上に電気光学効果だけで動作する集積型の光アイソレータを実現しました。順方向はほとんど損失なく光を通し、逆方向はおよそ33dB遮断します。従来のアイソレータは磁気光学材料や可動部を必要としましたが、本素子は原子系で知られるオートラー・タウンズ分裂を電気光学変調で模擬する構成をとり、磁性材料を使いません。印加電圧によって動作波長をテラヘルツ規模にわたって掃引でき、先行する音響光学方式に比べて調整幅は数千倍とされています。標準的なフォトニクス製造プロセスと整合するため、データセンター内の光信号ルーティングなど、小型・低消費電力・波長可変が同時に求められる用途に向きます(Nature Communications 掲載、2026年7月27日)。

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出典:phys.org(University of Illinois Urbana-Champaign/Nature Communications)
光学素子2026年7月

人が描かない形を計算が見つける——逆設計で最大500分の1に小型化したチップ部品(独マックス・プランク光科学研究所/米ハーバード大)

独マックス・プランク光科学研究所と米ハーバード大の研究チームが、インバースデザイン(逆設計)によって、窒化シリコン製のフォトニックチップ部品を従来設計の最大500分の1のサイズで実現しました。作製したのは波長分離素子・モードソーター・ミラーの3種です。ミラーは数マイクロメートル角ながら入射光の98.5%を反射し、目的以外の空間モードは通しません。逆設計は「光にどう振る舞ってほしいか」を先に指定し、それを満たす構造を最適化で探す方法で、得られる形状は人間の直感からは出てこないものになります。今回は既存の製造ラインにそのまま投入できる設計制約を守った点が特徴で、集積フォトニック回路を高密度化するうえで実装しやすい道筋を示しました(Nature Communications 掲載、2026年7月24日)。

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出典:phys.org(Max Planck Institute for the Science of Light/Harvard SEAS/Nature Communications)
レーザー分光2026年7月

標識を付けずに1分子の「かたちの変化」を追う——メタサーフェス増強ラマン(蘭トゥウェンテ大)

蘭トゥウェンテ大の研究チームが、液中にある単一タンパク質の構造変化を、色素や標識を一切付けずに追跡する光学手法を報告しました。読み取るのはタンパク質自身の分子振動で、原理としてはラマン分光を用います。ラマン散乱は分子の化学構造や立体構造を反映しますが、1分子からの信号は通常あまりに微弱で測定できません。研究チームはメタサーフェスによる局所的な電場増強でこの壁を越えました。無標識(ラベルフリー)であるため、標識そのものが分子の動きを変えてしまう懸念を避けられます。薬剤や毒素、ほかの生体分子に触れたときにタンパク質がどう応答するかを、1分子レベルで観察する用途が想定されます(ACS Nano 掲載「Label-Free Single Protein Dynamics Revealed by Metasurface-Enhanced Raman Spectroscopy」、2026年7月22日)。

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出典:phys.org(University of Twente/ACS Nano)
レーザー顕微鏡2026年7月

「暗くなるセンサー」を反転させて読む——細胞内の酵素活性をナノドメイン単位で可視化(米イリノイ大シカゴ校)

米イリノイ大シカゴ校の研究チームが、活性が高いほど蛍光が減るタイプ(ネガティブ型)の蛍光バイオセンサーの読み出しを反転させ、細胞全体にわたって酵素活性の分布を捉える手法 FINICI を報告しました。従来の顕微鏡観察では活性が細胞全体で平均化されてしまい、実際に反応が起きているナノドメインが背景に埋もれる問題がありました。ネガティブ型センサーは活性の高い場所ほど暗くなるため、活性がない領域と見分けがつかないことが原因です。本手法は分子内相互作用に由来する蛍光ゆらぎの変化を指標にすることで、この暗い信号を正の信号として読み直します。センサーを設計し直さずに既存のものをそのまま使える点が実用上の利点で、cGMP・Srcキナーゼ・Sykキナーゼのナノドメインが実際に観察されました(PNAS 掲載、2026年7月14日)。

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出典:phys.org(University of Illinois Chicago/PNAS)
量子光学2026年7月

制御も測定もせずにもつれが保たれる——相関した光子の「量子バス」で20年前の予測を実証(墺ISTA)

オーストリア科学技術研究所(ISTA)の研究チームが、相関のある光子からなる「量子バス」を共通の環境として使い、離れた2つの量子ビットを完全に自律的にもつれさせる実験に成功しました。これまで離れた量子ビット間の量子もつれの生成は、能動的な制御と繰り返しの測定に頼るのが一般的でしたが、本手法では外から操作を加えなくても、バスとの相互作用の結果としてもつれた状態に落ち着きます。20年以上前に提案されながら実験的な確認がなかった予測を裏付けた形です。バスが持つもつれのうち実際に移せたのは約10%で、能動制御による方式に比べると効率はまだ低い段階にあります。制御回路を減らせる方向性として、量子ネットワークの拡張性に関わる成果です(Physical Review X 掲載、2026年7月14日)。

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出典:phys.org(Institute of Science and Technology Austria/Physical Review X)
レーザー分光2026年7月

ねじれた光で「右手型・左手型」を見分ける——軌道角運動量ビーム×質量分析(印TIFR/IIT)

インド・タタ基礎研究所(TIFR)とインド工科大ボンベイ校・ハイデラバード校のグループが、軌道角運動量をもつ「ねじれた」超短パルスレーザー(数百フェムト秒)を気体状のカンファー(樟脳)に照射し、生成する分解イオンの本数が、光のねじれと分子の「手の向き(キラリティー)」の組合せによって変わることを示しました。飛行時間型質量分析計でイオンを数えるだけで鏡像異性体を区別でき、円二色性の微小差や電子の角度分布を測る従来法のような複雑な光学配置を必要としません。医薬品や生体分子で重要な異性体の判別を簡便にする手法として期待されます(Science Advances、2026年7月26日公開)。

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出典:phys.org(Tata Institute of Fundamental Research)
関連論文要約:キラリティ付与によって観測可能となるハイパーラマン光学活性

(金のらせん構造でアキラルな色素分子にキラリティを移し、ハイパーラマン散乱の光学活性を初めて観測した研究です。)

レーザー顕微鏡2026年7月

1回の観察で「形・分子・元素」をつなぐ相関顕微鏡施設——凍らせたまま生体材料も(米タフツ大)

米タフツ大学が、走査電子顕微鏡にラマン分光とEDX(元素分析)を組み合わせ、さらに共焦点レーザー走査顕微鏡や原子間力顕微鏡まで位置情報を共有させた相関イメージング施設「COCOON」を、学術・産業の外部利用に開放しました。0.8nmまで分解する電子顕微鏡と光学顕微鏡の視野を、同じ試料の同じ領域で結びつけられるため、装置間を移動する際に失われがちだった「どこを見ていたか」を保ったままマクロからナノまで追えます。急速凍結した状態を維持して観察できるので、水を含む生体材料を乾燥させずに調べられる点も特徴です(2026年7月10日公開)。

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出典:phys.org(Tufts University)
関連論文要約:ラマン顕微分光法による消費者向け樹脂中のチタン化学種の決定

(405nm励起のラマン顕微分光で、樹脂や繊維に含まれる酸化チタンの結晶形を見分けた研究です。)

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