火山ガラスにおけるナノライトの結晶化:高温ラマン分光法と低温岩石磁気分析からの知見

Bondar, D., Canizarès, A., Bilardello, D., Valdivia, P., Zandonà, A., Romano, C., et al. (2025). “Nanolite Crystallization in Volcanic Glasses: Insights From High-Temperature Raman Spectroscopy and Low-Temperature Rock-Magnetic Analysis.” Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 26, e2024GC011846. https://doi.org/10.1029/2024GC011846

背景

 火山溶融物の結晶化速度の解明は、地下深部から地表へのマグマ輸送や脱ガス過程、ひいては噴火様式の決定要因を理解する上で極めて重要である 。ナノメートル規模の極微小な結晶であるナノライトの生成は、溶融物の粘性を劇的に変化させ、爆発的噴火の引き金となる可能性がある 。特に安山岩質マグマは、地球の地殻形成に関わる主要な存在であり、その物理的特性の把握は火山災害評価の基礎となる 。物質の分子振動を利用して非接触かつ迅速に化学組成や鉄の酸化状態、水分量を特定できる手法であるラマン分光法は、この分野で優れた解析能力を発揮する 。本手法は試料準備が簡便であり、高い空間分解能を維持したまま、噴出物や合成ガラス中の結晶相を特定できる長所を持つ 。

従来の問題点

 しかし、過冷却状態の火山溶融物中におけるナノライトの生成を高温下でその場観察することは困難である 。従来、この種の観察には大型放射光施設によるX線解析や、加熱機能を備えた透過型電子顕微鏡などの極めて高価で特殊な装置が必要であった 。また、安山岩質溶融物を対象として、ラマン分光法により高温時のナノライト形成を追跡した先行研究は存在せず、その動態は不明確であった 。

解決方法と結果

 そこで、本研究では加熱装置を組み込んだラマン顕微鏡を用い、安山岩の高温環境下におけるその場観察を実現した 。実験では分光特性の変化を追跡し、最適な波長を特定する目的でCobolt社製の各種レーザーを使用し、特定の波長における感度の差異を検証した 。その結果、ガラス転移点以上の温度域で鉄チタン酸化物のナノライトが経時的に成長し、310 cm⁻¹および670 cm⁻¹に特有の信号が出現することを突き止めた 。また、岩石磁気分析の併用により、生成した結晶が直径約20nm、含有量2.6体積%の磁鉄鉱に近い組成であることを算出し、結晶化が粘性に与える影響を定量的に示した 。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

論文で使用されたCoboltのレーザー

355nmレーザー
355nmレーザー Zouk
515nmレーザー
515nmレーザー Fandango

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