Gok, B.D., Santos, N.F., Pereira, S.O., Ferreira, A.S., Germino, J.C., Soares, A.R., Fernandes, A.J.S., Costa, F.M., Baptista-Pires, L. “Laser-Induced Graphene Dual Optical/Electrochemical Platform for In-Chip Sensing Applications.” Sensors 2026, 26, 1128. https://doi.org/10.3390/s26041128
検査室に頼らず現場で迅速に結果を得る臨床現場即時検査(POC)の装置は、体液中の標的物質を認識素子で捉え、変換器が信号へ変えて診断を成立させることから、近年急速に普及している。変換方式では光学式と電気化学式が広く用いられる。その基盤材料として注目されるのが、ポリイミド膜への炭酸ガスレーザー照射による光熱変換で多孔質な三次元グラフェンを直接描画する、レーザー誘起グラフェン(LIG)である。大きな表面積と高い電気伝導性を持ち、型を使わず図形をそのまま描けるため加工が速い。
しかし、既存のPOC装置は光学式か電気化学式の一方だけで測る単一方式であり、偽陽性を排除しきれず信頼性に限界がある問題点がある。またLIGは照射条件で構造が変わるため、電気化学特性と光学特性のどちらへ最適化すべきかの指針も定まっていない。
そこで、本研究では光ファイバと電気化学用LIG電極を同一のチップへ組み込み、同じ試料室で光学測定と電気化学測定を同時に行える二方式の基盤を構築することによって、解決した。レーザーの走査回数を1〜3回と変えLIG1〜LIG3を作り分けた。Cobolt社製の532 nmレーザー(40 mW)は、作製したLIGのラマン分光の励起光源として、D帯・G帯・2D帯の強度比から欠陥密度と結晶性の変化を評価する目的で使用された。走査回数を増やすほど多孔性が増し酸化度が下がった。電気化学測定では走査1回のLIG1が最も可逆性と感度に優れ、色素DCMを用いた光学測定では走査3回のLIG3が最も低い検出下限を示した。さらにフェロシアン化物の電解酸化に伴う発色を電流と同時に追跡し、二方式の同時計測を実証した。
※本記事は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)を、独自の構成で再構成した日本語要約です。
【用語解説】
- レーザー誘起グラフェン(LIG):ポリイミドなどの高分子にレーザーを当て、その熱で表面を炭化させて多孔質のグラフェンを直接描く手法、およびそれで得られる材料。型や薬品を使わず、描いた図形がそのまま電極になる。
- 微分パルスボルタンメトリー(DPV):電圧に階段状のパルスを重ねながら電流を測る電気化学分析法。パルスの前後で電流の差を取ることで背景電流を打ち消し、通常の電圧掃引より低い濃度まで検出できる。
- D帯・G帯・2D帯:炭素材料のラマンスペクトルに現れる主要な振動帯。G帯は黒鉛的な六角網面に、D帯は欠陥や端に由来し、両者の強度比が欠陥密度の目安となる。2D帯の形状と強度は積み重なったグラフェンの層数を反映する。

