常在菌をコーティングした生体ハイブリッドインプラントによる抗バイオフィルム・骨形成・免疫調節応答(ヒト三次元免疫応答モデルでの評価)

Lohar, R., Nawaz, T., Landes, T., Schaefer-Dreyer, P., Pott, P.-C., Pflaum, M., Stiesch, M., Rahim, M.I. “Commensal microbiota–coated biohybrid implants induce antibiofilm, osteogenic, and immunomodulatory responses in a human 3D immunocompetent model.” Bioactive Materials 65, 626 (2026). https://doi.org/10.1016/j.bioactmat.2026.06.006

背景

 体内に埋め込むインプラントは、高齢化と慢性疾患の増加に伴って使用が拡大しており、とりわけ歯科インプラントでは治療の要となっている。口腔内で健康維持に働く常在菌は、病原菌と付着部位や栄養を競い合い、宿主の免疫系と協調して組織の恒常性を保つ「門番」として機能する。中でも口腔レンサ球菌である Streptococcus oralis は、表面に最初に定着する初期定着菌として微生物叢の安定に寄与し、歯肉上皮細胞に対して穏やかで均衡のとれた免疫応答を引き起こすことが知られている。こうした常在菌の性質を活かし、インプラント表面を常在菌で被覆して機能化する生体材料の設計が近年進められている。

従来の問題点

 しかし、インプラント表面は生体に対して不活性で細菌が付着しやすく、いったんバイオフィルムが形成されると持続的な炎症と再発性の感染を招き、抗菌薬も効きにくいため、インプラントの脱落につながる問題があった。常在菌で被覆した材料についても、生体適合性や骨形成、免疫調節までを含めた総合的な有効性を、ヒトの免疫環境を模した系で系統的に検証した例は乏しかった。

結果

 そこで、本研究では加熱で死菌化した S. oralis をチタン表面に固定した生体ハイブリッド材料(CHM)を作製し、ヒトの二次元および三次元免疫応答モデルで評価することによって解決した。CHM は病原性バイオフィルムの形成を抑え、宿主細胞の接着と組み込みを支持し、炎症を抑えながら骨形成を促す均衡のとれた免疫・骨形成応答を誘導することが示された。Cobolt 社製の 532 nm 連続波固体レーザー(Cobolt 04-01 Samba、試料位置で約 10 mW)は、自作の共焦点ラマン顕微鏡の励起光源として用いられ、チタン表面上に形成された常在菌被覆の存在と化学組成(リン酸基などに帰属するバンド)を非破壊で確認する目的で使用された。

※この要約は、オープンアクセス論文(CC BY 4.0)に基づいています。

用語解説】

  • バイオフィルム:細菌が表面に付着し、自ら分泌した基質に覆われて集合した膜状の構造。抗菌薬や免疫が内部まで届きにくく、慢性感染や再発の温床となる。
  • 常在菌(コメンサル微生物叢):体表や粘膜に普段から存在し、宿主に害を与えず、病原菌の増殖を抑えて健康維持に寄与する微生物の集まり。
  • 共焦点ラマン顕微鏡:レーザー光を試料に当て、分子振動に応じて波長がわずかにずれて散乱する光(ラマン散乱)を測定し、非破壊で化学組成を可視化する顕微鏡。ピンホールにより焦点面のみの情報を選択的に取り出す。

ラマン分光に使用された532 nmレーザー

Cobolt 532nmレーザー
532nmレーザー