フォトニクスニュース 過去ログ
これまでに掲載した世界の光技術ニュースを月別にまとめたアーカイブです。レーザー顕微鏡、レーザー分光、量子光学をはじめ、幅広いフォトニクス領域の研究開発・産業動向を、カテゴリで絞り込んでご覧いただけます。
ホタルの光の「明るさ」、100年以上信じられた値が過大だった——古い測定を鵜呑みにする危うさ(米レミザAI)
米レミザAIのDavid Silver氏が、1世紀以上にわたり使われてきたホタルの光の明るさの基準値を再検証し、実際にはかなり過大評価されていた可能性が高いと報告しました。ホタルの発光は、ルシフェリンとルシフェラーゼの反応で生じる生物発光です。その明るさは1912年に近代放射計測の草分けであるWilliam Coblentzが初めて測定しましたが、当時の値を現代の標準単位へ換算する過程で大きな誤差が生じていたとみられます。古い測定データをそのまま現代の単位に読み替えることの危うさを示す事例で、光の明るさ(測光)を正しく扱う重要性を改めて浮き彫りにしました(American Journal of Physics、2026年7月13日公開)。
低消費電力で体の微弱な磁場を測る——ダイヤモンド量子センサ×ラムゼー干渉(東京科学大)
東京科学大(Institute of Science Tokyo)が、光を閉じ込めるダイヤモンド導波路とラムゼー干渉法を組み合わせ、心臓や脳など体が発する微弱な磁場を低消費電力で検出できる磁気センサを開発しました。ダイヤモンド中の窒素-空孔(NV)中心を用い、わずか210mWのレーザーで動作しながら高い感度を実現しています。従来の生体磁気計測(心磁・脳磁)は大がかりで消費電力も大きいのが課題でしたが、小型・低電力で室温動作できるため、ウェアラブルや在宅での生体磁気モニタリングへの展開が期待されます(2026年7月22日公開)。
ダイヤモンド中のNV中心を数百個同時に読み出し、微弱な磁場をナノスケールで並列計測した研究です。
物理を組み込んだAIで「濁りの奥」を鮮明に——生体イメージングと自動運転センサへ(米UCLA)
米UCLAが、光の伝わり方(物理法則)を学習に組み込んだ機械学習で、散乱して見えにくくなった被写体の画像を、偽の模様(アーティファクト)を出さずに復元する手法を示しました。生体組織のように光を強く散乱させる媒質の内部を画像化する拡散光計測や、霧・悪天候下でのLiDAR・自動運転センサなど、光が乱れる状況での画像化に役立つと期待されます。物理モデルとデータ学習を組み合わせることで、少ないデータでも安定して高精細な再構成ができる点が特徴です(2026年7月22日公開)。
動く散乱媒質を通しても、画像の相関から物体の像を復元する行列ベースの計算イメージングの研究です。
レーザーが歪ませる鏡を「サーモグラフィ」で読む——重力波望遠鏡LIGOの感度を高める補償光学(米UCリバーサイド)
米カリフォルニア大リバーサイド校のチームが、重力波望遠鏡LIGOの心臓部にある大型鏡の微小な熱変形を赤外サーモグラフィで捉え、補償光学で補正する新手法を開発しました。LIGOでは約1メガワットに達するレーザーが4kmの装置内を巡り、鏡がわずかに光を吸収して数ナノメートル変形し、測定感度を下げてしまいます。研究では市販の赤外カメラの熱画像を波面計測や熱流モデルと組み合わせ、鏡全体の光学的な歪みを再構成しました。次期LIGO A+の歪み感度を最大31%高め、中性子星の合体をより遠くまで観測できると見積もっています。新たな装置開発を必要としない点も特長です(Classical and Quantum Gravity、2026年7月22日公開)。
溶ける「マイクロニードル」で光を皮膚がんへ導く——光線力学療法をより効果的に(米テキサスA&M大/ブラジル・サンパウロ大)
米テキサスA&M大とブラジル・サンパウロ大のチームが、水に溶けるマイクロニードル(微細な針の集合体)を使って、光線力学療法(PDT)の効果を高める方法を示しました。PDTは光に反応する薬剤をがん組織に集め、特定波長の光を当てて活性酸素で細胞を壊す治療ですが、薬も光も皮膚の深部まで届きにくいのが課題でした。針に薬剤を含ませて深く均一に届けると同時に、針の形状を工夫して光を組織内へ広く散らすことで、従来照らしにくかった部位まで光を届けられる可能性を示しました。非黒色腫皮膚がんなどのより効果的な治療につながると期待されます(Journal of Biomedical Optics、2026年7月22日公開)。
1画素ずつ電気で書き換えるメタサーフェス——ホログラムでゲームも操作(独シュツットガルト大)
独シュツットガルト大(Laura Na Liuら)が、金のプラズモニック・ナノアンテナと電気化学的に応答する極薄の導電性高分子を組み合わせ、可視光で動作するメタサーフェスの画素を1つずつ独立に電気制御できる「有機メタデバイス」を開発しました。これまでのアクティブメタサーフェスは、あらかじめ決めた光学機能の切り替えや限られた画素制御にとどまっていましたが、本素子は1V以下の電圧・ミリ秒の応答で、各画素をほぼクロストークなしに切り替えられます。実演では、キーボード入力が即座にホログラム投影の文字や数字に変換されるほか、ゲームコントローラで「スネーク」や落ち物パズルのホログラム版をプレイでき、ユーザーの操作に光が実時間で追従する「対話型の光学素子」を実証しました。イメージングや通信、センシング、ウェアラブル光学への展開が見込まれます(Nature Communications 掲載、2026年7月21日)。
「凍らせて」作る光ファイバー——光と音の結合を従来の1,000倍に(独マックス・プランク光科学研究所ら)
独マックス・プランク光科学研究所(MPL)とライプニッツ大学ハノーファー、ライプニッツ光技術研究所(IPHT)が、液体を満たしたガラス毛細管を凍らせるという新しい方法で光ファイバーを作製し、光と音波を同時に導きながら、両者を通常の石英ファイバーの約1,000倍の強さで結合させることに成功しました。溶岩が岩へ固まり、湖が凍るのと同じ「液体から固体への相転移」を利用してファイバーのコアを形成します。光ファイバー中では、光は音響波とブリルアン散乱を介して相互作用しますが、通常のガラスでは結合が弱く、信号処理に大きな光パワーが必要でした。結合強度が桁違いに高まったことで、脳型(ニューロモルフィック)光計算や量子信号処理の消費エネルギーを数桁低減できると期待されます(Optica 掲載、2026年7月21日)。
(音響フォノンによる光の散乱「ブリルアン散乱」を使い、散乱の強い生体組織の硬さを無標識で画像化する研究です。)
電場なしで電子を「狙って」流す——2色のレーザーで半導体中の電流を操縦(米ミシガン大)
米ミシガン大(Steven Cundiffら)が、電源や電場を使わずに、2色のレーザー光だけで半導体中に電子の流れ(電流)を作り、さらにその向きまで制御できることを実証しました。通常、電子は電場をかけると材料中を跳ね回りながら漂って移動しますが、本手法では2つの光の偏光の向きを回転させることで、電子を特定の方向へ細く絞った流れとして「押し出す」ことができます。これまでも光だけで電流を生む研究はありましたが、光が電流を「点ける」だけでなく「狙いを定める」段階へ進めた点が新しい成果です。素子は同大のナノ加工施設で作製され、光の性質を測る新しいセンサーへの応用も見込まれます。光学と電子回路の橋渡しとして、センシングやイメージング、通信への展開が期待されます(Physical Review Letters 掲載、2026年7月21日)。
光の速度をチップ上で「その場で」調整——AI時代の光コンピューティングへ(ソウル大)
韓国・ソウル大(Namkyoo Park/Sunkyu Yuら)が、光信号の速度と波形を自在に制御できるスローライト用のプログラマブル光集積回路を提案しました。光は速度が一定のため、光コンピューティングに不可欠なバッファやメモリの実装が難しいという課題がありました。研究チームは複数の光共振器の干渉を使うCRIT(結合共振器誘起透過)構造を作り替え、「明モード」と「暗モード」を一つの自由度として扱う2つのループ結合器を導入。これにより、作製後は固定だった遅延量や通過帯域を、動作中にリアルタイムで再構成できます。窒化シリコン(Si₃N₄)基板での実装可能性も電磁界シミュレーションで確認し、データセンターやAIサーバの低消費電力・高効率化、光通信機器の小型化への応用が期待されます(Advanced Science 掲載)。
らせん状の微小管共振器で、特定の波長の光の閉じ込めを強める仕組みを調べた研究です。
中性原子の「消える誤り」を利用、量子誤り訂正を実現可能に(プリンストン大)
米プリンストン大(Jeff Thompsonら)が、量子コンピュータの弱点である計算誤りを、検出・訂正しやすい形にあらかじめ設計する新しい方式を提案しました。準安定状態のイッテルビウム171という中性原子を量子ビットに使い、誤りを「どの量子ビットが壊れたか分かる(消失=erasure)誤り」に変換。問題のある量子ビットを特定できるため、通常なら訂正できないごく小さな符号(距離2)でも1個の誤りを訂正できることを示しました。中性原子はレーザーの光ピンセットで整然と並べて制御でき、大規模化しやすいのが特長で、誤り耐性を備えた実用的な量子計算機に向けた一歩です(Nature Physics 掲載)。
ナノの隙間で赤外の「色」を選ぶ——熱センサーをチップに載せる可変赤外フィルタ(豪UWA/ANU)
豪州のメタ光学研究拠点TMOS(西オーストラリア大・オーストラリア国立大)が、電圧で透過波長を変えられる超小型の赤外フィルタを開発しました。かさばる熱赤外センサー系をチップ上に集約でき、携帯型の汚染検知器やマルチスペクトルカメラ、次世代の化学センサーへの道を開きます。素子は金とシリコンの薄膜をナノスケールの孔で穴あけした「サンドイッチ」構造のメタサーフェスで、層間のごくわずかなすき間(1µm以下)を電気的に変えることで、通過する長波長赤外(LWIR)の波長を連続的に調整します。金属薄膜の微小な孔を光が予想以上に効率よく通る「異常光透過」を利用し、10V以下の低電圧で透過ピークを約8µm→9.8µmまで可変にしました。単体では分光フィルタですが、熱検出器と組み合わせると温度だけでなく物質やガスを識別できます。メタン漏れや工業排出の検知、非接触診断、ドローン搭載など、省電力・軽量が求められる用途に向きます(Advanced Materials Technologies 掲載、2026年7月13日)。
光を「彫って」量子物質を再現——回路を大きくせず300通りをシミュレート(カナダ・オタワ大)
カナダ・オタワ大とNexus for Quantum Technologies研究所、伊フェデリコ2世大のチームが、光ビームの形を作り込むことで複雑な物質中を粒子が動く様子を再現する、プログラム可能な量子シミュレータを開発しました。回路を大型化することなく多様な系を扱えます。込み入った電子回路を配線する代わりに、光子の空間パターンと偏光という2つの内部自由度を精密に設計した構造光を用い、結晶中の電子と同じように時間発展させます。3枚の空間光変調器(SLM)が計算を担い、ソフトウェアの更新だけで実験全体を別のシミュレーションに再構成できます。情報が光に載っているため各段階を直接撮影でき、固体素子の奥に埋もれがちな量子ダイナミクスを鮮明に観察できます。量子輸送やトポロジカル現象の研究、将来の量子技術の基盤検討に道を開きます(Light: Science & Applications/Advanced Photonics 掲載)。
冷却なしで「光の量子性」を選り分ける——金のメタ結晶で室温量子材料を実現(米ルイジアナ州立大)
米ルイジアナ州立大(LSU)らが、極低温の冷凍装置なしに室温で動く新しい量子材料「量子統計プラズモニック・メタ結晶」を作製しました。ガラス基板に載せた厚さ約110nmの金薄膜に集束イオンビームで100個の微小スリット(各200×400nm、間隔1µm)を刻み、その1つ1つを人工原子(メタ原子)として周期配列した、自然界に存在しない極薄の結晶です。金属ナノ構造を並べたメタサーフェス状の素子で、波長や偏光ではなく「複数光子の統計的なふるまい(量子統計)」に応じて光を選別・伝送し、量子コヒーレンスを保ったまま輸送できます。従来の量子材料は量子性を保つのに大がかりな冷却が必要でしたが、それを不要にした点が大きな進歩です。量子情報処理や太陽光エネルギー変換への応用に向けた、人工量子材料の設計指針を与える成果です(Nature 掲載、2026年7月15日)。
金のナノらせんを高密度に並べたキラルなメタ表面を作り、その近接場の増強をラマン散乱で可視化した研究です。
電流も磁場も使わず、光パルスだけで反強磁性体に情報を書き込む(独アウクスブルク大ら/日独共同)
ドイツ・アウクスブルク大学を含む日独共同研究チームが、超短パルスのレーザー光だけで反強磁性体に磁気情報を書き込むことに初めて成功しました。反強磁性体は応答が速く外部の乱れに強いため次世代の記録媒体として期待されてきましたが、その磁気状態を精密に制御するのが難しいという壁がありました。今回の手法では、光の偏光ではなく「光が進む向き」を利用して状態を選び分けます。磁気光学効果を介して磁化と光を結び付ける仕組みで、電流を流さずに記録できるため、省電力な情報デバイスにつながる可能性があります(Nature Materials 掲載、2026年7月4日公開)。
CO2レーザーでガラス容器を隙間なく封じる——化学廃棄物の長期保管へ(独LZH)
ドイツのレーザーツェントラム・ハノーファー(LZH)が、厚肉ガラス容器をレーザーで密封する加工プロセスを開発しました。ガラスは化学的にほとんど反応しないため、電池材料や産業廃液のような危険物を長期保管する容器に適しますが、従来の接合法は入熱が大きく残留応力が生じやすく、自動化も難しいという課題がありました。研究チームは波長10.6µmのCO2レーザーを用い、接合する2つの部材を1台の光源で同時に加熱するレーザー溶接方式を採用。微小な隙間や空隙のない連続した溶接ビードを得ることに成功しました(Journal of Laser Applications 掲載、2026年7月11日公開)。
光・磁性・電荷が絡み合う原子数層の材料——「磁性ファンデルワールス材料の励起子」を総括(米CCNY)
米ニューヨーク市立大シティカレッジ(CCNY)のMenon研究室が、光と磁性と電荷が強く結び付いた原子数層の物質群について、現状と展望をまとめた総説を Nature Materials に発表しました。光で電子が持ち上げられると、電子と正孔が対になった励起子が生まれます。層状の磁性半導体では、この励起子が材料の磁気秩序やスピン波(マグノン)と相互作用するため、磁気の状態が発光や吸収の性質に現れ、逆に光で磁気の状態を読み書きできる可能性があります。次世代の光電子デバイスや量子技術に向けた研究領域の見取り図を示す内容です(2026年7月14日公開)。
(層状磁性材料CrBr₃の振動と磁気の性質を、共鳴ラマン散乱で詳しく調べた研究です。)
AIが作製条件を逆算——量子ドットLEDの効率2倍・寿命40倍に(韓国・ソウル大)
韓国・ソウル大学工学部の研究チームが、量子ドット発光ダイオード(QLED)の作製条件を人工知能に逆算させる手法を開発しました。QLEDは量子ドットを溶液から塗って発光層を作りますが、従来は溶媒の組み合わせを試行錯誤で探すしかなく、粒子が不均一に詰まって電荷が流れにくくなる問題がありました。今回のAIプラットフォームは、望む膜の状態から最適な溶媒組成を予測します。実際に素子を作ったところ、発光効率が約2倍、動作寿命は40倍以上に伸びました。ディスプレイ用途をはじめ、材料開発の期間短縮につながる成果です(2026年7月18日公開)。
(量子ドットを高分子薄膜に分散させ、粒子の凝集が光記録材料の特性に与える影響を調べた研究です。)
「送らずに届ける」が直接送信に勝った——量子テレポーテーションで光子損失を克服(中国科学技術大)
中国科学技術大(Chaoyang Lu、Li-Chao Pengら)が、量子テレポーテーションが光子をそのまま送る「直接送信」より効率的であることを実験で初めて示しました。長距離の量子通信では、伝送距離が延びるほど光子の散乱・吸収による損失が深刻になります。テレポーテーションは量子もつれを使い、粒子自体を送らずに量子状態だけを転送する手法ですが、遠隔ノード間で質の高いもつれを用意すること自体が難しく、直接送信と正面から比較した研究はありませんでした。チームは6個の光子のうち4個を測定し、その結果を合図に残る2個に高品質なEPR対を用意する「予告付き」の全光学的手法を開発。これにより直接送信で生じる損失をほぼ回避できます。透過率約1%の損失チャネルで検証したところ、最適な量子クローニングで補強した直接送信と比べても約3倍効率的でした。量子中継器やネットワーク型量子計算に向けた一歩です(Nature Physics 掲載)。
(光子対を使い、量子の光が吸収・干渉する様子をプログラム可能な集積回路の上で再現した研究です。)
放射線量を200分の1に——「ゴーストイメージング」で2メガピクセルのX線撮影(中国科学院上海高等研究院)
中国科学院・上海高等研究院(Tiqiao Xiaoら)が、通常のX線撮影に必要な光子のわずか0.48%で、約2メガピクセルの高解像度X線画像を得る手法を実証しました。ゴーストイメージングは2本の光束の相関から像を再構成する計算イメージング手法で、ランダムなパターンを担う参照光は試料に当たらず、試料を通る光はごく弱くて済むため被曝線量を大きく減らせます。ただし従来は「極低光量」と「高解像度」の両立が難しく、実験的な実証が進んでいませんでした。研究チームは結晶で高い相関を保ったままX線を弱い試料光と強い参照光に分け、微弱信号用と微細構造用の最適な検出器を組み合わせ、さらに合成開口の考え方で数十回の測定から全体像を再構成する アルゴリズムを導入。上海放射光施設のビームラインでの比較実験で、従来法と同じコントラスト対雑音比を0.48%の光子数で達成し、1,992×944画素の画像を得ました。胸部X線やCTなど日常診療への応用、とくに小児・妊婦・頻回検査の被曝低減が期待されます(Optica 掲載)。
散乱した光のまだら模様から、一回の撮影で元の像を計算で復元する手法の研究です。
お腹の赤ちゃんの「酸素」を光で直接測る——分娩監視を1970年代から刷新へ(米カーネギーメロン大/ICFO)
米カーネギーメロン大(Jana Kainerstorfer代表研究者)とスペインICFOなどの国際コンソーシアムが、分娩中の胎児の低酸素(hypoxia)を直接・実時間で評価する装着型モニタリングシステムの開発に着手しました。米ARPA-H支援の3,900万ドル規模プロジェクト「OMEGA」で、2026年6月に始動。分娩中の胎児評価は1970年代からほぼ変わらず心拍数モニタリングが標準ですが、心拍の変化は問題の兆候を示すだけで「酸素が足りているか」は分かりません。OMEGAは近赤外分光(NIRS)や脳波などの光学・電気生理センサーとAIを組み合わせ、胎児だけでなく母体・胎盤・子宮も含めた系全体を非侵襲で計測し、低酸素の有無と原因の両方を捉えます。ICFOは乳幼児の脳血流を診るTinyBrainsプロジェクトでfNIRSと拡散光計測(DCS)を統合した実績があり、装着型OEMモジュールを担当します(optics.org)。
光音響信号を時間で切り分け、皮膚の深部にある血管から血糖値を非侵襲に読む手法の研究です。
青色の寿命が5,000倍に——樹脂で封止して量子ドットLEDを実用域へ(MIT/サムスン)
米MIT(Vladimir Bulović、Moungi Bawendiら)とサムスンの共同研究が、電気励起型の量子ドットLED(QD-LED)の寿命を大きく延ばす方法を示しました。QD-LEDは純度の高い色を省エネで出せますが、とくに青色素子が赤・緑より50〜100倍不安定で、実用化を阻んできました。チームはQD-LEDをナノメートル厚の薄片に切り出して断面を高分解能顕微鏡で観察し、動作中に発光を担う3層が変質・薄膜化し量子ドット同士が融合すること、その一因が動作中に放出される余分な水素・酸素であることを突き止めました。アクリレート系樹脂で封止するとこれらの放出が抑えられ、赤で8倍、青では5,000倍超の寿命改善を実現。薄型・大面積で色純度の高い光源として、テレビやAR/VR、医用イメージング、照明への展開が期待されます(Science Advances 掲載)。
(量子ドットを樹脂の薄膜に混ぜ、粒子の凝集が膜の光学特性をどう変えるかを調べた研究です。)
1ピコ秒の「1発撮り」で生きた線虫の化学変化を動画に(米テキサスA&M大)
米テキサスA&M大(Alexei Sokolov、Zhenhuan Yiら)が、生きた生物の中で進む化学変化を実時間で捉える広視野赤外マイクロ分光イメージングを開発しました。ラマンや赤外の分光イメージングは分子振動をもとに無標識で化学分布を可視化できますが、走査や長時間・複数回露光が必要なため、速い動きはブレて撮れませんでした。本手法は約1ピコ秒のレーザーパルス対1組で1枚を撮る「シングルショット」方式。三次の和周波過程で赤外光を可視信号に変換し、走査せずに共鳴発光から画像全体を一度に取得します。1コマがピコ秒スケールのため動きによるブレがほとんど生じません。水中の生きた線虫(C. elegans)を約400nmの空間分解能で撮影し、kHzレーザーで同レートの動画化にも成功。水を多く含む生体試料にそのまま使えるため、病態の発生・進行の追跡や薬剤応答の観察への応用が期待されます(PNAS 掲載)。
中赤外の分子振動をもとに、生きた細胞を染めずに化学組成ごと画像化する顕微鏡の研究です。
世界初の「中性子レンズ」——炉やセルの中の構造を6m離れて鮮明に撮る(スイスPSI)
スイス・パウル・シェラー研究所(PSI)が、世界初となる中性子イメージング用の色消し(アクロマート)レンズを開発しました。中性子は金属を深く透過しつつ水素やリチウムなど軽元素に敏感で、電池やエンジン内部の観察に有用ですが、物質との相互作用が弱く曲げる・集めるのが難しいという難点があります。中性子ビームは多波長を含むため、それらを同一焦点に結べる実用レンズがこれまで存在せず、試料を検出器のすぐ近くに置くしかなく分解能と試料サイズが制限されていました。新レンズはニッケルの同心円リング(最細部は200nm以下)で回折を、ダイヤモンド構造で屈折を担わせ、広い波長域を同一点に集束。20µm以下の分解能を実現し、6m離した市販リチウムイオン電池の巻回電極構造を7倍に拡大撮像しました。炉・クライオスタット・圧力セル内部の観察や中性子顕微鏡への道を開きます(Nature Communications 掲載)。
(液晶を多層にねじった回折素子で、波長ごとに焦点がずれる色収差を抑えた研究です。)
波長を変えるだけで画像を呼び出す——回折層に4,000枚以上を記録する光ストレージ(UCLA)
米UCLA(Aydogan Ozcan、Mona Jarrahiら)が、深層学習で設計した受動的な誘電体の回折層を積み重ね、そこに多数の画像を記録して光だけで読み出す「波長多重回折光ストレージ」を提案・実証しました。各画像に固有の照明波長を割り当て、ラジオの選局のように入射光の波長を変えるだけで、同じ出力視野に別々の画像が浮かび上がります。可視域のシミュレーションでは4,000枚超の独立した画像パターンを平均48dB超のピーク信号対雑音比で再構成でき、波長チャネル間の干渉も小さく抑えられました。実証機として2層の回折素子を試作し、500〜740nmの6波長で6枚の画像の記録・読み出しに成功。機械的な可動部や磁気媒体の劣化がなく、長期アーカイブや情報セキュリティ、ディスプレイ、光コンピューティングへの応用が期待されます。偏光や入射角との多重化でさらに容量を増やせます(回折光ニューラルネットワークの設計手法を応用、Advanced Photonics 掲載)。
フォトポリマーに複数のホログラムを重ねて記録し、太陽光を電池面へ導く研究です。
目の中に見える「幻の模様」を検査に使う——量子光学の構造光で網膜の健康を測る(米バッファロー大)
米バッファロー大(Dusan Sarenacら)とウォータールー大が、偏光した光が網膜の構造で散乱するときに周辺視野へ現れる淡い蝶ネクタイ状の模様「ベームのブラシ(Boehm’s brushes)」を、はっきり見えるようにする手法を報告しました。網膜疾患があると知覚しにくくなるため健康状態の指標になり得ると考えられてきましたが、健常者でも見えにくく臨床応用は困難でした。研究チームは量子光学で発展し顕微鏡や精密計測にも使われる構造光(偏光を空間的に設計した光)を用い、網膜構造の対称性に合わせることで模様を明るく大きくし、ローブ(花弁)の数も変えられるようにしました。健常者約12名で視覚閾値を測定し、中心から離れた視野ほど検出しやすいという基準データを取得。次段階は加齢黄斑変性など網膜疾患患者での検証です(PNAS 掲載)。
1チャンネル200Gbpsの受光素子——AIデータセンターの光受信を倍速に(韓国ETRI)
韓国電子通信研究院(ETRI)が、1チャンネルあたり200Gbps級の光信号を処理できるフォトダイオード(受光素子)を韓国で初めて開発しました。データセンターで一般的な112Gbps級に対し、最大224Gbps/チャンネルと約2倍の処理能力です。InGaAs系の素子で、70GHz以上の帯域と0.75A/W以上の高い受光感度を0.5×0.4mmのサイズで両立。チップ裏面にリン化インジウム(InP)製の凸レンズを一体形成する「裏面レンズ集積構造」により、受光効率と位置合わせのしやすさを大きく改善しました。別体の受光レンズが不要なため実装が簡素化でき、800Gbps/1.6Tbps級の光モジュールでのコスト低減も見込まれます。AIデータセンター内部の光トランシーバや5G/6G基地局への適用が期待されます(Optics Express 掲載)。
ガラス表面の静電気で原子を捕まえる——量子情報の保持時間が10倍に(独フンボルト大)
独フンボルト大ベルリン(Arno Rauschenbeutel、Riccardo Pennettaら)が、髪の毛の約100分の1という極細ガラスファイバーの近くに、レーザー冷却した原子を捕捉・制御する新方式を実証しました。従来のナノフォトニック系では原子を引き寄せるのに複数のレーザービームが必要でしたが、本手法はガラス表面に自然に生じる静電気的な力で原子を引き寄せ、青方離調したエバネッセント場でやさしく押し返して安定な捕捉領域を作ります。捕捉力は従来より弱いものの、原子はほとんど失われずに移送でき、光の弱い領域に留まるため擾乱が減少。その結果、捕捉時間は約2倍、量子情報の保持時間は約10倍に伸びました。量子メモリや量子通信ネットワークの簡素化・高信頼化につながる成果です(Nature Photonics 掲載)。
2,000個の原子を光ピンセットで整列——量子コンピュータ向けレーザー光学系(フラウンホーファーILT)
ドイツのフラウンホーファーILT(アーヘン)が、シュツットガルト大学第5物理学研究所で建設中の量子コンピュータ向けに、2,000個のリュードベリ原子をサブミクロン精度で配置する高度なレーザー光学系を開発しました。20行×100列に個別制御できる2,000本のレーザー焦点を、超小型の真空チャンバー内へ投影。それぞれが光ピンセットとして働き、原子どうしが相互作用するのに必要な3.5µmの間隔で捕捉・保持します。量子論理演算はこの原子配列上で進み、多数の量子ビットを密に集積できます。実用的な量子コンピュータのスケールアップに向けた基盤技術です(Fraunhofer ILT/シュツットガルト大学)。
電子を「アト秒」で動かして観る——超高速STMが量子力学の時空間限界に到達(レーゲンスブルク大/MPI)
独レーゲンスブルク大(J. Repp、R. Huberら)とハンブルクのマックス・プランク研究所(A. Rubioら)が、新開発のレーザー系を用いた超高速走査トンネル顕微鏡(STM)で、電子の位置と時間発展を同時に任意の精度では決められない「時空間限界」を初めて観測しました。金属探針から銀表面へ数原子径だけ離れた距離を、2つの光パルスの時間差を変えながら電子を移動させ、トンネル過程をアト秒(10⁻¹⁸秒)の時間分解能で捉えました。電子を狭い時空間に閉じ込めると波束が空間的に広がる、という関係も直接測定。将来はCMOSの数十万倍速い電子制御や、化学結合を狙って切る・変える反応制御への応用が見込まれます(Nature Photonics 掲載)。
(ダイヤモンド中の発光欠陥を使い、単一電子の動きを原子スケール・ナノ秒級で読み取る研究です。)
極薄「回折レンズ」が光を針状に集束——OCTの撮像深さを9倍に(中山大学)
中国・中山大学のHaowen Liangらが、厚さわずか約7µmの多層回折レンズで光を細く長い「光ニードル(optical needle)」に集束させ、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)の撮像深さを従来比で約9倍に高めました。数百万個の微細な階段状構造で複数の光学機能を1枚に集約し、800〜900nmの広帯域光を横幅2.4µm・焦点深度2,640µm(深さ対幅比1,100:1)の針状ビームに整えます。従来の対物レンズを置き換えるだけで、組織の表面の微細構造と深部を同時に高解像度で捉えられます。眼科診断の早期化や、将来はスマートフォンのカメラなど小型・低コストな撮像系への応用が期待されます(Optics Letters 掲載)。
(液晶の層を重ねた薄い回折素子を水溶性の配向材料で作り、偏光を選んで光を曲げる研究です。)
量子もつれで衛星⇄地上の「時刻」を守る——妨害を即座に検知するもつれ光源(豪CSIRO)
オーストラリアのCSIROが、衛星測位・時刻配信(GNSS)信号への妨害やなりすましに対抗するため、持ち運び可能で高フラックスな量子もつれ光子源「Quantum Light Source」を開発し、国防科学技術グループ(DSTG)へ2台納入しました。シンプルなガラスキューブで、反対方向に進む光子対を量子もつれ状態にします。片方を地上に残し、もう片方を数百km上空の衛星へ送っても相関が保たれ、安全な通信リンクを張れます。量子もつれは干渉に極めて敏感で、第三者が信号を傍受・改ざんすると量子状態が変化するため妨害を即座に検知でき、別チャンネルへ切り替えられます(もつれ配送)。防衛用途に限らず、通信網・電力網・金融など民生インフラの高信頼な時刻同期にも波及する成果です(CSIRO)。
フェムト秒「デュアルコム」ライダーで微小金属部品をミクロン精度で3D計測(英ヘリオット・ワット大)
英ヘリオット・ワット大のDerryck T. Reidらが、2本のフェムト秒周波数コム(デュアルコム)を用いた新方式のライダーで、小さな金属部品を従来のライダーより桁違いに高い精度で3次元計測できることを示しました。自動運転車のライダーが数cm精度で大きな対象を測るのに対し、本手法は約400mmの距離からアルミ部品をミクロン精度で撮像し、3面で9〜38µmの確度を達成。数百フェムト秒の超短パルスと、戻り光を二光子吸収で直接電気信号に変える「完全電子式」検出を組み合わせ、外乱に強くシンプルなレーザーで動きます。エンジン内部など手の届きにくい部品の非接触検査・品質管理への応用が期待されます(Renishaw社との産学連携、Optics Letters 掲載)。
レーザーの「指紋」で機器を本人確認——パスワード不要、AIが瞬時に認証(サウジKAUST)
サウジアラビアのKAUST(Yating Wan助教ら)が、極小のレーザー素子が発する固有の光パターンを機器ごとの“指紋”として使い、パスワードやセキュリティキーなしで機器の正当性を確認できる認証技術を開発しました。カオス的に振る舞う微小レーザー(VCSEL)は、同じ素子でも複製が極めて難しい複雑な光信号を生み、その統計的な特徴をAIがほぼ瞬時に照合します。実験では極めて高速かつ低消費電力で認証応答を生成でき、数百万台の機器・サーバー・センサーが安全に通信する必要があるクラウド、AI基盤、IoTネットワークへの応用が期待されます。光技術(フォトニクス)とAIを組み合わせ、大規模ネットワーク時代のデジタルセキュリティに新たな選択肢を示す成果です(Nature Electronics 掲載)。
CO2レーザー溶接で「密閉ガラス容器」を自動製造——危険廃棄物の長期保管に(独LZH)
ドイツのレーザーセンター・ハノーバー(LZH)が、CO2レーザーで厚肉ガラス容器を溶接密閉する新製法を「LasGlaReLa」プロジェクトで開発しました。電気自動車の普及で増える電池材料や化学産業廃棄物は、環境保護・安全な取扱い・長期の構造健全性を同時に満たす「カテゴリーIV処分場」向け容器が必要です。化学的に極めて不活性なガラスは残留物と反応せず、将来の回収・リサイクルにも適します。従来の熱ガス法は入熱が制御しにくく残留応力が大きい上、自動化も難しいのが課題でした。研究チームは波長10.6µmのCO2レーザー1台で2つの接合部材を同時に加熱し、5mm厚の板ガラスを全厚にわたり微小空隙のない連続溶接。入熱後も機械的強度が保たれ(2週間保管後の応力試験で確認)、フタが重力で自然に沈み込むためクランプ治具が不要という独自方式です。高速で自動化に適します(Journal of Laser Applications 掲載)。
2色の赤外レーザーで分子の「かたち」を制御——隠れた指紋を暴く(フリッツ・ハーバー研究所)
ドイツ・フリッツ・ハーバー研究所の研究チームが、高度に同期させた2本の赤外(IR)レーザーを使い、分子が異なる立体構造(配座)へ切り替わる様子を制御できることを示しました。極低温のヘリウム液滴中の分子に波長の異なる2つのレーザーを当て、赤外分光で通常は見えない構造の「指紋」を引き出します。分子が化学反応の途中でどのように組み替わるかを観察する新しい窓口となり、反応を支配する微視的プロセスの基礎的理解につながります(Fritz Haber Institute)。
(銀のナノ構造で微弱な信号を増やし、花粉アレルゲン蛋白質の振動指紋をラマン分光で捉えた研究です。)
冷却不要で「置くだけ」の単一光子源——19インチラックに集積、室温動作(韓国KRISS)
韓国標準科学研究院(KRISS)が、極低温冷却を必要とせず室温で動作する単一光子源を、19インチラックに収まる小型装置として開発しました。電源を入れればすぐ使える「プラグ&プレイ」設計で、量子光源技術を実験室の外の実地利用へと近づけます。光子を1個ずつ生成する単一光子源は、量子通信・量子計算・量子センシングの出発点となる要素です。決定論的な空間マッピング技術で光子の位置を精密に定め、扱いやすさと安定性を両立しました(Laser & Photonics Reviews 掲載)。
カーボンナノチューブに狙って量子欠陥を作り込み、室温で光子を1個ずつ放たせる化学手法の研究です。
自宅で測る「肌の水分量」——近赤外の拡散反射で皮膚の奥まで(中国医学科学院/カーディフ大)
中国医学科学院・北京協和医学院とカーディフ大などのチームが、皮膚の水分量を手軽に測る小型の近赤外センサーを開発しました。アトピー性皮膚炎(AD)では水分保持が症状の鍵ですが、従来法は表面止まりで、皮膚病変や環境ノイズに弱く携帯測定が困難でした。そこで皮膚の各層から戻る光を解析する拡散反射分光を採用。910nmと970nmの2波長と専用プローブ形状で、表面ではなく皮下の水分変化を捉えます。温度で変わる皮膚の光学特性を補正する「温度対応アルゴリズム」を組み合わせ、光強度のゆらぎや熱ドリフトに強くしました。新指標「光学水和指数(OHI)」でAD患者と健常者を高精度に判別し、保湿剤塗布後の短時間の変化も追跡。在宅での非侵襲モニタリングに道を開きます(APL Photonics 掲載)。
ハイドロゲル光ファイバで乳がんを内側から撮像——太さ0.1mm級の柔らかいファイバ(ハルビン工程大)
中国・ハルビン工程大の張宇(Yu Zhang)らが、生体適合性の高いハイドロゲル製マルチモード光ファイバ(HMMF)を開発しました。太さ約120〜200µmと細く、数百µm幅しかない乳管など体内の狭い空間にも入り込めます。クモの糸の紡糸に着想を得た延伸紡糸法で作り、水分を保って数日の安定性を確保、980nmで1.05dB/cmと低損失。ファイバ先端から光を送って組織のスペックル像を取得し、二段階のマルチモードファイバイメージングと深層学習で、正常・浸潤がん・乳管がんを93.97%の精度で分類しました。従来の硬いファイバより低侵襲で、乳がんの早期発見や体内センシング・手術ナビへの応用が期待されます(Optics Express 掲載)。
髪ほどの細さのファイバ越しに像を結ぶため、光の通り方を表す透過行列の測り方を比べた研究です。
散乱をむしろ味方に——「回折光ニューラルネットワーク」で濁った媒質越しに像を復元(UCLA)
米UCLA(Aydogan Ozcanら)が、生体組織のように光を散らす「濁った(散乱)媒質」の内部に、学習させた受動的な回折光ニューラルネットワークの層を層状に埋め込むことで、未知の散乱体の向こう側にある物体の像を光だけで復元する新方式を実証しました。散乱体の中に最適化した回折層を分散配置することで、光の伝搬そのものを情報復元プロセスの一部として使えます。可視光での実験でも像の復元に成功し、バイオメディカルイメージング、リモートセンシング、光通信への応用が期待されます(Laser & Photonics Reviews 掲載)。
光だけで動く内視鏡先端カメラ——世界初のチップオンチップFLIMマイクロカメラ(Tyndall)
アイルランドのTyndall National Instituteが、電池も配線も使わず「光」だけで駆動する超小型の生体内デバイスで2つの世界初を達成しました。外径わずか4mmの内視鏡スケールで、先端のカメラチップは光ファイバで送った光を多分割の太陽電池で受けて発電し、完全に光給電で動作します。さらに世界初となる内視鏡スケールの蛍光寿命イメージング(FLIM)マイクロカメラを実現し、30µm以下の微細構造を分解します(Optics Letters 掲載)。
不規則に強度を揺らした光で照らし、蛍光が消えるまでの時間の分布を高速に再構成する顕微鏡の研究です。
「割らずに卵の中を見る」——卵殻が光を閉じ込める性質を発見(伊・蘭)
イタリア・ミラノ工科大と孵卵装置メーカーHatchTech(オランダ)らのチームが、無傷の鶏卵に光を入れると、卵殻が「積分球」のように光子を何度も反射して閉じ込め、わずか4cmの卵の内部で光子が最大約2mもの距離を進むことを、時間分解の拡散光計測で発見しました。この性質を使えば、卵を割らずに胚の雌雄判定や受精・品質の評価を非侵襲で行える可能性があり、毎年大量に殺処分される雄ヒナの問題の解決にもつながると期待されます(Cell Press「Newton」6月19日掲載)。
揺らいで散乱する媒質の向こう側でも、行列の計算で像を復元するイメージング手法の研究です。
「マグノン運動量顕微鏡」でナノスケールのスピン波を直接可視化(マックス・ボルン研ほか)
独マックス・ボルン研究所(MBI)を中心に、ヘルムホルツ・センター・ベルリン、ナポリ大、スイス連邦工科大ローザンヌ(EPFL)の国際チームが、磁石中のスピンの集団励起「マグノン」を、軟X線を使って二次元の運動量空間で直接撮像する新手法「マグノン運動量顕微鏡(MMM)」を開発しました。実験ではマグノンが軟X線に対する動的な回折格子として働き、その回折パターンからナノメートル波長(テラヘルツ帯に相当)のマグノンの波長と振幅を1回の測定で決定できます。試料の微細加工を必要とせず高感度・高速で、代表的な磁性体イットリウム鉄ガーネット(YIG)で4マグノン散乱などの強い非線形相互作用を観測。波で情報処理する省エネな次世代コンピューティングの基盤研究を前進させます(Nature Physics 掲載)。
ナノ共振器で光を回折限界より小さく絞り込み、波長204nmのスピン波の位相を測った研究です。
持ち運べる「紫外デュアルコム分光計」で大気汚染物質を実時間で指紋分析(オーストリア・グラーツ工科大)
オーストリア・グラーツ工科大(TU Graz)のBirgitta Bernhardtらが、世界初の広帯域紫外(UV)デュアルコム分光計を小型・モバイル化し、大気汚染ガスを実時間で高精度に「指紋」分析できることを示しました。わずかに繰り返し周波数の異なる2台の周波数コムの干渉を使い、高い光周波数を扱いやすい無線周波数帯へ変換します。分解能1GHz・帯域12THz・1秒以下の取得時間で、最大2.5km先の分子の吸収スペクトルを捉えます。UV領域は分子の電子遷移を励起でき大気の光化学反応に直結する重要領域ですが、コム光源が乏しく未開拓でした。本装置はホルムアルデヒドの微細な吸収線を多数新たに観測し、1960年代以来教科書に載る回転定数の誤りを最大15%修正。複雑な電子安定化装置が不要で、大気計測・バイオセンシング・呼気診断への応用が期待されます(PhotoniX 掲載)。
色収差を「深さスキャナー」に——極薄メタレンズで可動部なしの3D共焦点イメージング(米ペンシルベニア州立大)
米ペンシルベニア州立大(Zhiwen Liu、Xingjie Niら)が、通常は「収差」として嫌われる色収差を逆手に取り、機械的な焦点走査なしで深さ方向の3D共焦点イメージングを行う極薄メタレンズを実証しました。波長ごとに異なる深さへ光を集める強分散メタレンズと広帯域光、共焦点ピンホールを兼ねる単一モード光ファイバを組み合わせ、色(波長)を深さに対応づけて反射スペクトルから直接深さ情報を読み取ります。可視域200nm帯で1.3mmの深さ範囲をカバーし、軸方向の空間帯域積は約68と従来のメタレンズ型色共焦点より大幅に向上。可動部が不要で小型化に適し、表面形状計測や半導体・微小光学部品の検査、内視鏡型イメージングへの応用が期待されます(Nano Letters 掲載)。
液晶フィルムを3枚重ね、色ごとの焦点ずれ(色収差)を抑えた薄型の回折レンズの研究です。
特別な素材なしで光を「ねじる」——自由空間で生まれるキラル光(英UEA/南ア Wits)
英イーストアングリア大(UEA)と南アフリカ・ヴィットヴァーテルスラント大(Wits)が、特別な材料やメタサーフェス、強い集光を使わずに光のキラリティ(ねじれ)とスピン角運動量を生成・制御する新手法を示しました。偏光が場所ごとに変化する構造化ビームを自由空間で伝搬させると、最初は円偏光成分が無くてもスピンが局所的に立ち上がり、領域ごとに分離します。鍵は伝搬しても保たれるビームの「トポロジー」で、パンチャラトナム位相指数が制御の指標になります。軌道角運動量(OAM)は整数で何通りにもねじれるため、情報符号化の「文字数」を大きく増やせます。生体・医薬品のキラルセンシングや、古典・量子通信への応用が期待されます(Light: Science & Applications 掲載)。
マイクロ共振器に液晶の渦構造を埋め込み、ねじれた光(軌道角運動量)を発振させた研究です。
小さな金属部品をミクロン精度で3D計測——「二光子デュアルコムLiDAR」(英ヘリオット・ワット大)
英ヘリオット・ワット大のDerryck Reidらが、精密測定機器メーカーRenishawとの共同で、対象までの距離を非接触でミクロン精度計測できる新方式のLiDARを開発しました。2台のモード同期レーザーが作るデュアルコム(光周波数コム)測距に、二光子吸収を使った完全電子式の検出を組み合わせ、40cm先のアルミ加工部品を9〜38ミクロンの精度で点群化。製造現場の非接触検査・品質管理への応用が期待されます(Optics Letters 掲載)。
「メタサーフェス」で太陽の磁場を一発撮影——実用装置への初応用(UCサンディエゴ/BAE)
米UCサンディエゴのNoah Rubinらが、極薄の平面光学素子「メタサーフェス」を実用の科学観測装置に初めて組み込みました。太陽撮像メタサーフェス偏光計「SIMPol」は偏光を回折次数へ空間的に振り分け、可動部なしに複数の偏光画像を同時取得します。Dunn太陽望遠鏡で黒点の磁場を定量マッピングし、NASAの最新宇宙ミッションに匹敵する結果を得ました(Science Advances 掲載)。
短寿命の稀少同位体を「飛行中」にレーザー分光——韓国初、原子核構造研究へ(IBS IRIS)
韓国・基礎科学研究院IRISを中心とする共同チームが、稀少同位体ビームを用いた韓国初のレーザー分光実験に成功。イオン・原子ビームとレーザーを一直線に重ねるコリニアレーザー分光装置「CLaSsy」で、秒速約40万mで飛行する短寿命核の電子構造を崩壊前に測定しました(Journal of Instrumentation掲載)。
「広い視野」を丸ごと学習するAIで蛍光画像を高精度復元「LargePNet」(北京大)
北京大のXi Pengらが、蛍光顕微鏡画像を復元する汎用AI「LargePNet」を開発。広い視野の統計情報をそのまま取り込む設計で大局的な相関を保ち、PSNRで0.5〜2dB改善、推論をCNNの約4倍高速化。200nm分解能の長時間タイムラプスや三色STED超解像を実現しました(Nature Communications 掲載)。
弱い光で細胞を傷めずに超解像で撮るため、観察できる視野を4倍に広げた研究です。
二次元材料ZnPS₃が単一光子を放出、量子チップへの新たな道(ワルシャワ大ほか)
ワルシャワ大・シンガポール国立大・ラドバウド大の共同チームが、層状二次元材料ZnPS₃から単一光子の放出を初観測。点欠陥がレーザー励起で規則的な光子の流れを生み、偏光度が高く量子暗号に好適。基板を選ばず微小光回路やシリコンチップに集積しやすい材料基盤です(ACS Nano掲載)。
カーボンナノチューブに狙って量子欠陥を作り込み、室温で光子を1個ずつ放たせる化学手法の研究です。
「数ピコメートルの鏡のズレ」が系外惑星の直接撮像を左右(米研究)
米国の研究チーム(Sanchez-Soriaら)が、分割鏡(セグメント鏡)を持つ将来の大型宇宙望遠鏡で系外惑星を直接撮像する際、鏡セグメント間のごくわずかな位置ずれ(波面ドリフト)が画像処理性能をどれだけ損なうかをシミュレーションで評価しました。コロナグラフと、RDI・ADI・CDIという3種の差分画像処理を比較したところ、地球型や金星型の惑星を検出するには「10分あたり2ピコメートル未満」というセグメント整列の安定性が必要だと判明。大規模な光学的ゆがみよりも、セグメント間の微小なズレの方がはるかに悪影響が大きいことを示しました。次世代宇宙望遠鏡の設計指針となる成果です(Journal of Astronomical Telescopes, Instruments, and Systems 掲載)。
液晶マイクロ共振器で離れたレーザーを同期、室温で「スーパーモード」発振
英サウサンプトン大・ワルシャワ大などの欧州チームが、液晶と有機色素を封入した微小な光共振器の中で、数十マイクロメートル離れた複数の微小レーザー発光点を自発的に位相同期させ、空間的に広がった単一のコヒーレント光「スーパーモード」として発振させることに成功。従来は極低温・強結合領域でしか観測されなかった現象を、室温・弱結合の簡素な材料系で実現しました。電圧で液晶分子の向きを変えると発光点間の結合のオン/オフや強度、出射方向・偏光まで動的に制御でき、光コンピューティングやニューラルネットワーク、再構成可能な集積光回路への応用が期待されます(Nature Communications 掲載)。
レーザーで光学部品に「位置合わせ」を作り込み、フォトニクス製造を低コスト化(英ヘリオット・ワット大)
英ヘリオット・ワット大発のFreeForm Photonicsが、光学ガラス部品そのものにレーザーで受動的な位置合わせ構造を直接作り込む製造法を実用化へ。フォトニクス製造コストの半分以上を占めてきた手作業のアライメント調整を不要にし、サブミクロン精度で高速・安価な組立を可能にします。量子コンピュータや次世代医療診断、光通信インフラなど、これまで手作業で組み立てられてきた光部品の量産化に道を開く成果で、スコットランド・エンタープライズの支援のもと事業化が進められています。
メラニンを正確に測る——ラマン分光の信号ゆがみを補正(ICFO)
スペイン・ICFO(光科学研究所)のチームが、生体に多く含まれるメラニン色素をラマン分光で正確に分析するための補正法を開発。強い蛍光バックグラウンドや、レイリー光除去フィルターに由来する波打ち(リップル)といった信号のゆがみを取り除き、色(色素量)の異なる試料どうしを正しく比較できるようにしました。皮膚や腫瘍など、メラニンが関わる組織の非侵襲診断への応用が期待されます(Journal of Physical Chemistry Letters 掲載)。
円偏光レーザーで核融合実験の後方散乱を低減、光学素子の損傷を抑制(米LLNL)
米ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)が、国立点火施設(NIF)の慣性閉じ込め核融合で使う192本のレーザーについて、光の偏光状態が「交差ビームエネルギー移行(CBET)」に与える影響をシミュレーションで解析。直線偏光ではなく円偏光を用いると、同じ円錐に入るビーム間のばらつきが減り、後方散乱(バックスキャッター)が抑えられて光学素子の損傷を低減できることを示しました。より高出力での運転や、将来のレーザー核融合施設の設計につながる成果です(Physics of Plasmas 掲載)。
室温の光共振器で世界最高クラスのレーザー周波数安定度を達成(英NPL)
英国立物理学研究所(NPL)が、室温で動作する全長68cmの光学リファレンス共振器を用い、レーザーの相対周波数不安定度4×10⁻¹⁷を達成。これまで同等の性能は複雑な極低温装置でしか実現できておらず、室温で到達したのは初めてとされます。レーザー線幅は12mHzに達しました。超安定レーザーは光格子時計(次世代の光原子時計)の中核技術であり、高精度な時刻・周波数標準やナビゲーション、基礎物理の検証を支える成果です(Optica 掲載)。
「超放射」でDLCZの壁を破る単一光子源、量子中継器の効率を改善(ウォータールー大IQC)
カナダ・ウォータールー大の量子コンピューティング研究所(IQC)のチームが、原子集団のスピン波から光子を取り出す読み出しを「超放射」で駆動する新方式の単一光子源を実証し、量子中継器の25年来の標準である DLCZ プロトコルを上回る読み出し効率と量子相関を達成しました。超放射は発光強度が原子数の2乗で強まるため、複雑な共振器を使わずに効率を高められます。長距離の量子鍵配送や将来の量子インターネットに向けた前進で、SPIE「Photonics for Quantum 2026」(6月、ウォータールー)で発表されました。
プログラムできる集積光回路の上で、単一光子や2光子の吸収のふるまいを再現した研究です。
「未開封のまま」有毒メタノールを検出するレーザー分光(セント・アンドルーズ大)
英セント・アンドルーズ大とオーストラリア・アデレード大のチームが、瓶を開けずに酒類中の有毒なメタノールを検出できる新しいラマン分光法を開発。レーザー光をリング状に整形し波長を微調整することで、瓶のガラスや主成分のエタノールからの信号を抑え、メタノール由来の信号だけを取り出します。緑・茶・青など着色ガラスの瓶でも、無色のジンやウォッカから着色したウイスキーまで対応し、検出下限0.2%(人体の安全限界の約1/10)を達成。偽造酒対策のほか、医薬品・化粧品などの非破壊検査への応用も期待されます(Journal of Physics: Photonics 掲載)。
蛍光の邪魔を抑えた785nm励起で、14種の農薬のラマン指紋を集めて機械学習で見分けた研究です。
室温・液晶マイクロ共振器で複数のレーザー点を同期、単一の「スーパーレーザー」に
英サウサンプトン大・ワルシャワ大らの国際チームが、液晶と有機色素を封入した微小な光共振器の中で、空間的に離れた複数の微小レーザー発光点を自発的に位相同期させ、全体が一つの広がったコヒーレント光源(スーパーモード)として振る舞う新方式を実証。従来は極低温・強結合領域でしか見られなかった集団的な振る舞いを、室温・弱結合の簡素な系で実現しました。電圧で液晶分子の向きを変えると発光点同士の結合のオン・オフや強度を制御でき、再構成可能なフォトニクス回路や光コンピューティングへの応用が期待されます(Nature Communications 掲載)。
「偏光まで測る」コヒーレントLiDARで距離・速度・材質を一度に取得
カナダ・トロント大とCiena社が、通信用のコヒーレント光モデムを送受信器に流用し、各走査点1回の計測で距離・速度に加えて表面の材質(偏光情報)まで同時に取得する新方式のLiDARを開発。直交2偏光を毎秒数百億回ランダム変調し、偏光の変化から距離・速度・材質を復元します。アイセーフ強度でミリ精度の測距を実現し、金属とプラスチックや本物と造花の判別、霧・雨など視界不良下での散乱透視も実証。ロボティクスや自動運転、リモートセンシングへの応用が期待されます(Optica 掲載)。
ノイズに強い新種のもつれで次世代量子センサーを高精度化(JQI/JILA)
米JQI・JILAらの理論チームが、2つの原子集団を光共振器越しの光子のやり取りで結び付け、両センサーに共通するノイズには鈍感で「差分の信号」には鋭敏な新種のもつれ状態(リープ・マティス状態)を提案。デコヒーレンスフリー部分空間を使い、レーザー周波数の揺らぎなど現行の光格子時計を悩ませる共通ノイズを打ち消します。系を大きくするほど短時間で準備でき、実用的な量子センサーの規模拡大に向く点が特長です(Physical Review X 掲載)。
離れた3つの原子量子ビットを光で結ぶ「GHZ状態」を分散生成(Duke/IonQ)
米デューク大量子センターとIonQが、約2m離して置いた3モジュール内の単一バリウムイオンを、放出された単一光子の干渉を介して結び付け、3者間のもつれ「GHZ状態」をネットワーク越しに分散生成することに成功。局所2量子ビットゲートや事後選択を使わずに忠実度84〜88%を達成し、Merminの不等式を27σ破って検出ループホールも閉じました。単一の真空槽に頼らず光接続で量子処理ノードをつなぐ、モジュール型量子計算への道を示す成果です(arXiv公開)。
光音響イメージングで生体組織内のマイクロプラスチックを初めて可視化
英UCL・キングストン大・バーミンガム大(Stephen Patrickら)が、組織にレーザーパルスを当て、マイクロプラスチック特有の光吸収で生じる微弱な超音波を検出する「光音響イメージング」により、生きたマウス体内深部のマイクロプラスチックを非侵襲・高分解能で初めて地図化。ポリプロピレンやポリエチレンの粒子を、化学標識なしで数か月にわたり追跡できました。信号量が蓄積量に比例するため、日常的な曝露と健康影響を結びつける研究への応用が期待されます(Advanced Science 掲載)。
世界最高クラス「2.0kW」のレーザーダイオードバーを開発(浜松ホトニクス)
浜松ホトニクスが、NEDO委託事業として単一バーで世界最高クラスとなる連続2.0kW出力の半導体レーザー(LD)バーを開発。LDバーは多数の発光部を一列に並べた素子で、高出力・高エネルギーの固体レーザー励起に多数使われるため、1バーあたりの高出力化が強く求められていました。成果は国際半導体レーザー会議(ISLC 2026・フィンランド/タンペレ、6月14〜17日)で発表。レーザー加工や核融合用レーザーの励起源の小型化・低コスト化につながると期待されます。
「畳み込み分光器」で約$10・センチ角の高精度分光チップ
英ケンブリッジ大とGlitterinTechが、畳み込み定理を光の領域で直接実行する新方式の「畳み込み分光器(ConvSpec)」を開発。アンバランスMZIやマイクロリング共振器を縦続接続し、位相を比例制御して分光応答をずらすことで、約10ドル・センチ角ながら据置型を上回る精度を実現しました。窒化ケイ素フォトニクス上に集積し近赤外(1200〜1700nm)で動作。プラスチックや医薬品の判別、非侵襲の血糖・血中乳酸モニタリングなどを実証しています(Nature Photonics 掲載)。
安価な「ハイブリッド固液レンズ」で大型組織を高解像3Dイメージング
米コロンビア大(Raju Tomerら)が、曲率のある固体レンズと屈折率を精密に合わせた液浸液を一体化し、単一の光学系として働かせる「ハイブリッド固液光学(HySIL)」を開発。安価な空気対物レンズで、各種の組織透明化法に対応しつつセンチメートル大の組織をサブミクロン分解能・収差なく撮像できます。ライトシート顕微鏡に統合し、マウス全脳やヒトがん生検の3D病理などへの応用を示しました(Nature Biotechnology 掲載)。
透明化した組織を3Dで見るライトシート顕微鏡を、市販部品だけで安く自作できるようにした研究です。
光を「映す」と「読む」を同時にこなす新型ピクセル(ETHチューリッヒ)
スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)のDavid Norrisらが、光を出して画像を映すだけでなく、入ってくる光を解析して撮影もできる新型ピクセル「フーリエピクセル」を開発しました。ナノメートル精度で彫り込んだ表面で光を干渉させ、明暗(強度)に加えて位相や偏光まで制御・解析できます。従来のピクセルは「表示」か「撮像」のどちらかしかできませんでしたが、両方を1画素で兼ねられるため、将来はカメラとディスプレイを一体化した双方向デバイスへの応用が期待されます(Nature、6月24日掲載)。
世界初の「核時計」が稼働——原子核の振動で時を刻む(欧州・中国)
欧州(ウィーン工科大ら)と中国(清華大ら)の2チームが、原子核のエネルギー準位の遷移で時を刻む世界初の「核時計(nuclear clock)」をそれぞれ実証しました。現在の光原子時計が電子のエネルギー準位を使うのに対し、核時計はトリウム229の原子核を紫外レーザーでわずかに励起し、その「振動」を基準にします。両チームはレーザー光の吸収信号を監視して周波数を核遷移にロックし、時計の刻みが時間とともにずれないようにしました。原子核は外乱に強く結晶中で保護されるため、より頑健で可搬性が高く、将来はより高精度な時計や、核内部の力を探る新たな手段になると期待されます(arXivに6月公開、Natureが報道)。
極薄半導体で「もつれ光子」を高効率生成、忠実度99%超(ウィーン大ら)
ウィーン大学のBenjamin Braunらが、伊ラクイラ大・米コロンビア大と共同で、原子数層の極薄半導体「遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)」を周期的に分極反転させ、もつれ光子対を高効率に生成する手法を実証しました。自発パラメトリック下方変換(SPDC)では通常、嵩高い非線形結晶と複雑な光学系で位相整合を取る必要がありますが、TMDの非線形性を周期的に反転させて「擬似位相整合」を実現し、コヒーレンス長の制約を超えて変換効率を高めました。偏光もつれの忠実度は99%超を維持。ナノフォトニクス上に集積できる量子光源として、量子鍵配送や量子センサーへの応用が期待されます(arXiv公開)。
光量子プロセッサをGPUスパコンに直結、低遅延統合を実証(Quandela/NVIDIA)
仏Quandelaが、自社の光(フォトニック)量子プロセッサ(QPU)とNVIDIAのGPUインフラを、低遅延インターフェース「NVQLink」とFPGAベースの量子制御装置を介して直結する経路を実証しました。従来クラウドAPIやジョブキュー経由だった量子計算を、GPUと並ぶ「アクセラレータ」としてHPC環境の内側に同居させる新しい実行モデルを示すものです。光回路は推論中も同じ構成を保てるため、単一光子を用いる光量子計算は量子機械学習(量子リザバー計算や量子特徴マップなど)に好適。量子コンピュータをスパコンに組み込む一歩で、独・ハンブルクのISC High Performance 2026で発表されました。
レーザーで試料を非接触回転、繊細な細胞を高精細3D撮像(KIT)
独カールスルーエ工科大(KIT、Moritz Kreysing/Fan Nanら)が、レーザーで液中に微小な温度差を作り、生じる緩やかな流れで浮遊する細胞などの試料を3次元すべての方向に非接触で回転させる手法を開発。ピペットや針といった微小工具を使わず試料を傷めずに様々な角度から撮像でき、複数視点の像を統合してより高精細な3次元像を得られます。基礎医学研究のほか、非接触の微小操作・微小ロボティクスや超精密加工への応用も期待されます(Light: Science & Applications 掲載)。
量子ドット単一光子源で120kmの量子鍵配送
独中の国際チームが、テレコム帯の半導体量子ドットが放つオンデマンド単一光子と時間ビン符号化を用い、120km超の光ファイバーで安定した量子鍵配送(QKD)を実証。6時間以上の連続運転を実現し、固体単一光子源を使う実用的な量子通信網への一歩となりました(Light: Science & Applications 掲載)。
超広視野・深部対応の2光子顕微鏡「ULTRA」で脳を多階層イメージング
研究チームが、50mm²を超える超広視野で単一細胞分解能を保つ最先端の2光子顕微鏡「ULTRA」を開発。補償光学を組み込み、表層から深さ900μmまで、横方向7mm超・体積45.24mm³にわたってマウス脳の構造と神経活動を生きたまま可視化しました。広く離れた複数の脳領域を高分解能で同時に観察でき、大規模な神経回路の包括的な解析に向けた強力なツールとなります(Light: Science & Applications 掲載)。
28フェムト秒の超短パルスで、2光子・3光子・高調波の像を同時に取得する多光子顕微鏡の研究です。
AIで超解像SIMをリアルタイム化「UBSIM」
米UCサンディエゴ校が、構造化照明顕微鏡(SIM)の画像再構成にAI(アルゴリズム・アンローリング)を組み込んだ「UBSIM」を開発。物理モデルに基づくため偽構造(ハルシネーション)を抑えつつ、生細胞を最大50フレーム/秒の超解像動画で観察できます(Nature Communications 掲載)。
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